ネイチャーポジティブ実践【第1回】: 未管理地を自然共生サイトへ。企業が始める生態系調査

植生調査
この記事の執筆者
菊原 久美
関東環境技術センター
1993年入社。主に自然環境調査や環境影響評価業務に従事。現地調査では動物分野を担当し、特に昆虫や魚類調査を得意としています。趣味は鳥の羽根集め。調査中で見つけると、ちょっと嬉しくなります。最近の目標は、いつまでも元気に現場で活動できる技術者でいること。そのために、日々、体力と気力の維持に努めています。

調査場所(2025年8月)
はじめに
身近な自然を守る、その第一歩
前回のコラム(技術コラム#002:ネイチャーポジティブに貢献するための行動)では、都市部で子どもたちが自然や昆虫と触れ合う機会が減っていること、そして、その解決策の1つとして企業による「自然共生サイト※」の取り組みが注目されていることをお話ししました。
では、企業が身近な自然を守り、その価値を高めていくためには、何から始めればよいのでしょうか。
今回から数回にわたり、現在私たちが自社で進めている「自然共生サイト」登録へのリアルな道のりをご紹介していきたいと思います。
※自然共生サイトとは、生物多様性の保全や回復に貢献する企業・団体の取組み地として認定される枠組みです。

調査場所(2025年7月)
7ヘクタールの土地で見た“現実”
最初の印象は「誰が管理するの?費用は?」
現在、私たちは約7ヘクタール(東京ドーム約1.5個分)の自社所有地を活用し、自然共生サイトの登録に向けた準備を進めています。 しかし、最初から豊かな自然が広がっていたわけではありません。この土地はしばらくの間、本格的な手入れがされないまま放置されていました。2025年の春に私たちが初めて現地に足を踏み入れた時の率直な感想は、一言でいえば「未管理の草地と樹林」でした。
広大な空き地には草が生い茂り、手入れされていない周辺の樹林にはクズがはびこり、かつての道路すら草木に覆われて通行が難しい場所もありました。 「この広すぎる緑地、一体誰がどうやって管理するの? 費用はどれくらいかかるの?」 それが、現場を見たときの第一印象でした。

調査場所(2025年5月)
自然共生サイト化の第一歩は“現状把握”
厄介な空き地か、価値ある緑地か
企業の土地管理において、ただ草刈りをして維持するだけでも多大なコストがかかります。
しかし、私たちはこの土地の管理を単なる「負のコスト」として終わらせるのではなく、ネイチャーポジティブ(自然再興)に貢献する「自然共生サイト」として、新たな価値を見出す道を選びました。
「自然共生サイトに登録しよう」と決まった時、最初に行うべきことは何でしょうか。
それは「そこにどんな生き物が暮らし、どんな環境があるのか」といった現状を正しく知ることです。そこで私たちは、2025年度の1年間をかけて、植物相、植生、哺乳類、両生爬虫類、鳥類、昆虫類と、多岐にわたる項目を網羅的に調べる「自然環境調査」を実施しました。

鳥類調査
自然共生サイト化を支える“専門性と調査力”
私たちの強み:専門家集団による「本気の自前調査」
一見するとただの荒れ地に、なぜ多項目にわたる本格的な調査が必要なのでしょうか。
それは、自然界の生き物たちが複雑に絡み合って生きているからです。例えば特定の野鳥の生息場所を評価するには、餌となる虫の存在や、その虫が食する植物、その植物が育つ環境はどうなっているなど、生態系全体の繋がりを読み解かなければ、その緑地の本当の価値は見えてきません。
実は私たちの会社には、長年、様々な現場で自然環境調査を担ってきた専門スタッフが多く在籍しています。普段は官公庁や企業のご依頼を受けて全国の自然と向き合っている生物専門の技術者たちが、自分たちの足元にあるこの土地に「専門家として目」を向けたのです。
なお、私たちが自社所有地を「自然共生サイト」に登録しようと動き出した同時期に、環境省による「2025年度生物多様性保全推進交付金(生物多様性保全推進支援事業)」(令和7年度生物多様性保全推進交付金(生物多様性保全推進支援事業)に係る交付事業者(執行団体)の公募について)の公募が実施されていました。
本取り組みを着実に進める上で、このような補助制度の活用は有効であると考え、自社内で申請資料の作成から申請手続きまで一貫して対応しました。

植物相調査

昆虫調査
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